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文化を越えたブランディング:ラテン文字と漢字の組み合わせ方法

  • 2017.11.07

  • 日本でデザイナーとして活動していると、必ずと言っていいほど英字と日本語の組み合わせに悩むことになります。生まれの全く異なる文字をどのように自然に組み合わせるのか。

    様々なバイリンガルレター

    様々なバイリンガルレター制作例

    今回は、英語(ラテン文字)と漢字の組み合わせに取り組む、デザイナーのTien-Min Liao (ティエン・ミン・リャオ) 氏と、Ulrik Hogrebe (ウーリック・ホーグリーブ) 氏のトークセッション「文化を越えたブランディング:ラテン文字と漢字の組み合わせ方法」をご紹介したいと思います。

    原文 : “Branding across cultures”

    以下翻訳内容です。※翻訳・掲載は記事製作者の許諾を得ています。(Thank you, Ulrik ! )


    今週は、バイリンガル・レタリング・プロジェクトの作成者であるティエン・ミン・リャオ(Tien-Min Liao)氏とラテン文字と漢字を組み合わせる方法を学びます。

    ティエン・ミン・リャオ氏のプロジェクトであるバイリンガルレターはラテン文字と漢字の書体をペアにし、文化を越えて共通の美学とブランド表現を実現する方法を探究しています。ティエン・ミン氏は二つの文化間における流儀と技法の違いについて説明し、デザイナーが誤って認識している違いを正していきます。

    TypeThursdayは、文字の形を愛する人々のための会合です。

    キャラさんがミシェルさんとグーグルNYCのレタリングプロジェクトについて議論している写真

     

    ウーリック・ホーグリーブ: ティエン・ミンさん、こんにちは。本日はご参加いただき誠にありがとうございます。さて、ティエン・ミンさんがラテン文字と漢字のペアリングを扱う多くの作業を行い、文字から文字へ、外観や印象をどのように解釈していらっしゃるのかについては後程深くお話を伺ってまいりますが、その前に皆様に自己紹介していただき、ティエン・ミンさんがなぜ書体へ興味を持たれたのかをお話しいただけますか。

     

    ティエン・ミン・リャオ: ウーリックさん、ありがとうございます!私はもともと台湾の台北市出身です。台北の大学を卒業後ニューヨークに渡り、グラフィックデザインを学びました。現在私はSiegel + Gale社というブランディング・エージェンシーで働いています。私が行ってきた二か国間における書体の研究を活かし、ロゴタイプの開発や改良プロジェクトにかかわる仕事に携わる機会を頂いています。

    プラット・インスティテュートで開講されていたジェシー・ラーガン氏の書体デザイン講座を受講しながら、書体デザインに取り組みました。そして1年後、Siegel + Gale社で働きながら、Type @ Cooperプログラムに入りました。

    ティエン・ミン・リャオ氏

     

    ウーリック: それで、ティエン・ミンさんを書体デザインの世界へ導いたのは何だったのですか?

     

    ティエン・ミン: 私が中学生の時、台湾のポップアーティストのアルバムデザインのカスタムロゴタイプに魅了されました。書体の個性がデザインに与える影響がどれほど大きいのか初めて気づきました。しかしジェシー・ラーガン氏の書体デザイン講座を受講するまでは、書体デザインとレタリングとの違いについてはあまり知りませんでした。

     

    ウーリック: なるほど!Type @ Cooperでの経験はどのようなものでしたか。副業として働いていたのですか?その間は厳しい時期だったのでしょうか?逆に、学んできたことが活かせる職業を副業にできて良かったのでしょうか?

     

    ティエン・ミン: 平日は仕事をこなし、夜間や週末には授業を受け、当時はとても忙しくしていました。作業負荷はかなりありましたが、楽しかったですね!プログラムは一度卒業しましたが、その後もう一度受講し直しました(つまり、ほぼ全授業受講。いくつかは受講し損ねましたが…)。今回は別の先生の授業に参加しました。1年では全然物足りなく感じたのです。新しい先生方の授業を受けるのは本当に面白かったです。実際、一年目はまさに、ただの始まりでした・・・そして2年目を終えた後、書体を製作する際に、自分自身の意思決定をよりスムーズに行えるようになりました・・・と同時に、Siegel + Gale社では、複数のリデザインプロジェクトにより多く携わる機会を得られるようになりました。自分に自信もつきましたね。

    ミン サンズ —  Type@Cooper 2年目のティエン・ミン氏のプロジェクト

     

    ウーリック: なんと!2度も受講されたのですね!専念されましたね。分かりました。それでは、本題のバイリンガル・レタリングの仕事について少し話を聞かせてください。プロジェクトの説明をしていただけますか?

     

    ティエン・ミン: このプロジェクトは、2か国間でのレタリングやロゴタイプで使用するラテン文字-漢字のペアリング研究です。私は自分の見解、方法、文字の合成に関するエッセイを書き、自分のサイトですべて文書化しました。

     

    ウーリック: 私もティエン・ミンさんのインスタグラムをフォローしているので見たことがあります。ティエン・ミンさんの作品は本当に面白いと思っています。ところで、ティエン・ミンさんがプロジェクトで解決しようとしている問題は何ですか?

    「Typeji」のロゴ作成プロジェクト;2つのロゴは同じ個性、要素、意味を有している。

     

    ティエン・ミン:まあ!ありがとうございます。 しばらくブランドエージェンシーで働き、その後米国・台湾・中国を旅行しました。そこで多くの西洋ブランドの中国語/漢字verロゴタイプのデザインが、元のロゴタイプと同じ品質で製作されていないことに気付き始めました。逆もまた然りです。

    通常はオリジナルのロゴデザインと組み合わせるために、既存の書体(主に一般的な書体)を選択します。したがって、ラテン字のロゴタイプには一般的な漢字の文字を選択します。逆もまた同じです。しかしこの種の調整は、両方の言語を同時に表示するときにのみ機能します。翻訳後のロゴが翻訳言語単体の場合、既存の書体の文字だけが表示されることになるため、そのブランドの個性はすべて失われることになります。これではロゴタイプとはいえません。他によく見かける共通点として、誰かが汗水流して必死にロゴタイプを翻訳して描いたとしても、書体デザインに精通していないデザイナーによって酷く描かれてしまうことが挙げられます。例えばラテン文字や漢字のロゴタイプでは、ストロークの厚さや薄さがそれぞれ間違っていることがよくあります。ですから言語と文字の両方が協働し、共通の個性を表現できるような方法がないかと考えるようになったのです。これこそ私がこのプロジェクトを始めた理由です。

     

    ウーリック: 本当に面白いですね。どうしてラテン文字に精通しているのかよく分かりませんでしたが、これではっきりしました。もちろん、トヨタやフォルクスワーゲンなどの企業は、ラテン文字・キリル文字・漢字の書体ファミリーに投資していることは知っています。ですから、文化を越えて一貫したブランドを求めるような企業にとっては、ティエン・ミンさんの発言は書体に投資するいい動機づけになったと思います。

    ラテン文字と漢字のデザインの違いについて教えてください。

     

    ティエン・ミン: はい。大企業の中にはブランドのビジュアル・アイデンティティー全体で使用するための、多言語の書体に投資する予算を持っている企業があります。しかしほとんどの顧客にとって、カスタム書体を自作することは難しいかもしれません。それでも、少なくとも自分のロゴをカスタマイズしようと努力するべきだと私は思います。

    書体思案中のティエン・ミン氏のスケッチ

    漢字とラテン文字については、構造と密度の点で2つの文字が実際に異なっています。文字としては、どちらも小さな単体に分けることができますが、それら単体が組み合わされる方法は全く異なります。ラテン文字の文字は水平に配置されるのに対し、漢字はすべて異なる方法で構築されます。いくつかは2つのユニットで構成されていたり-上下に並べられていたり-並んで配置されたり-複数の単体で構築されたりするものもあります。漢字の構成に比べると、ラテン文字は比較的似ています。

     

    ウーリック: なるほど。漢字の書体数は幾分制限されているというのは、合っていますか?誰かから、漢字は文字セットが膨大なので全てデザインするのはコストがかかると聞いたことがあります。

     

    ティエン・ミン: それは本当です。ラテン文字と比較すると、中国語や日本語には多くの文字が存在します。でもだからこそ、漢字のカスタムロゴタイプをもっと盛り上げていく必要があると思います。

     

    ウーリック: 次は方法について少し教えてください。ティエン・ミンさんは、ペアリングをどうやって作りますか?

     

    ティエン・ミン: 私は通常、1つの文字から始めて、まず紙の上にスケッチします。当初はロゴタイプを無理やり同じように見せようとするあまり、失敗ばかりしていました。同じように見せるのは難しいのです。古くからラテン文字と漢字とは異なる道具を使って描かれているので、守らなければならない、異なる重みの分布ルールがあるのです。50回程訓練をした後、それを体系的に行う方法を見出しました。

    (左)書体の特徴を装飾要素として描いた例。(右)同じ道具を使って書かれたとイメージして描いた例。

    私はコンテンポラリースタイルの作成に、3つの方法を使用します。最初の方法は、古くからの重みの分布に基づいて構造を作成し、その後、他の文字から特性を装飾要素として抽出する方法です。2つ目の方法は、同じ道具で描かれたとイメージする方法です。しかしこの種の調整は、書体の見た目をカジュアルなものにしたり、少々定型化されすぎたりしてしまうことがあります。最後の方法は完全に実例です。両方を絵として捉え、より表現力のあるレタリングやロゴを作成する方法です。どのアプローチ方法が良いのかは、デザインの主題に依ります。使用するアプローチ方法が決定したら、次のステップでは、色・テンション・バランス・コントラストなどのすべてのビジュアルパラメータに一貫性があることを確認します。

     

    ウーリック: 素晴らしいアプローチ方法ですね。ラテン文字と漢字を同じように見せるだけでなく、文化を越えても同じことを表現させることでもある、というティエン・ミンさんの記事もどこかで読んだような気がします。となると、ラテン文字のロゴタイプが、モダンで力強く見えるものであれば、漢字もそれに合わせるべきなのでしょうか?また、それは簡単に出来るものなのですか?

     

    ティエン・ミン: そうですね。二つのロゴタイプは、同じ個性を表現すべきだと思います。バイリンガル・レタリングの腕を上げ、本当の意味での文化的な違いを理解するには、両方の文字の国の文化的知識を持ち合わせることが必要だと感じています。たとえば、Li-shuはカリグラフィの一種です。これは、漢朝から多く石に彫られており、現在では、通常はシリアスな表現するために使用されますが、それと同時に少し古臭いと感じさせることがあります。

    様々なペアリング制作例

     

    ウーリック:魅力的なお話ですね。どれくらいの種類のカリグラフィが存在するのか​​、また、どのように使われているのかを尋ねるのは愚かな質問ですか?使用する人たちは、書く内容によって書体を変えたりするのでしょうか。例えば私が西洋人として、より深刻な場面ではセリフ体、カジュアルなシーンではサンセリフ体を選択するような感じなのでしょうか。

     

    ティエン・ミン: カリグラフィには、5つの大きなカテゴリーがあります。その中のどれが現代的であるかを言うのは難しいですね。ブラックレターのように、古風にもモダンにも使用できるものもあります。カリグラフィの他にも、ラテン体のように、明朝体・ゴシック体など、多くの書体カタログがあります。

     

    ウーリック: よくわかりました!さて、もし私がタイプデザイナーまたはグラフィックデザイナーだとして、もっと漢字を学びたいとすれば、どうしたらいいでしょうか?何から始めればいいでしょうか?

     

    ティエン・ミン: うーん、難しい質問ですね…。漢字のデザインに関する本や雑誌のほとんどは、日本語や中国語で出版されています。今まで英語で書かれた教本は見たことがありません。もし興味があれば、私のWEBサイトに非常に基本的な情報はいくつか載せてありますが、それだけでは不十分ですし…。

    Reform  -  バイリンガル・ロゴタイプ

     

    ウーリック: あ、そうか!すでにいくつかの記事は読ませていただいておりました!素晴らしい入門書でしたよ。でも、本や教本シリーズと実際のマーケットとではギャップがありそうですよね。ティエン・ミンさん、これはぜひ新しいプロジェクトとして本を出版しなくては!

     

    ティエン・ミン: あはは(笑) もし皆様が興味のあるようでしたら、近い将来、本当に良い教本を英語に翻訳するかもしれませんよ。

     

    ウーリック: 素晴らしいアイディアです!今日は貴重なお時間ありがとうございました。ではその本を拝見させていただき、その後はティエン・ミンさんのWEBサイトとInstagramをフォローしながら勉強したいと思います。今後益々のご活躍をお祈りします。

     

    ティエン・ミン:お話しするお時間を頂き、誠にありがとうございました。

     

    created by Ulrik Hogrebe / Tien-Min Liao

     


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